- こんにちは、元JAL社員のあび太郎です。
今回は、JALフィロソフィとは?から始まり、その一つ一つの項目に関する僕の見解をお伝えします。
JALフィロソフィはその名のとおり”哲学”であり、捉え方に関して明確な答えは存在しません。
各項目をどう捉え/どう行動に移すかは人によって大きく異なります。
今回お伝えする内容は、あくまでも僕個人の見解であり、JALとしての見解とは一切関係がありません。
まずはじめに、JALフィロソフィとは?
JALフィロソフィは、JALが倒産したことをきっかけに、稲盛和夫名誉会長が作成したものです。
倒産からちょうど1年経った2011年1月19日に発表されました。
書かれている内容は、JALがどのような考え方/信念を持って、どのような哲学をベースに経営されるのかを示す指針になっています。
言い換えれば、社員一人ひとりがどのような考え方を持って仕事をするのか/生きていくのかをまとめたものです。
構成としては、
「第1部 すばらしい人生を送るために」
「第2部 すばらしいJALとなるために」
の2部構成になっており、1部2部のなかに更に具体的な内容が記載されています。
具体的な構成は、以下の目次を参考にしてもらえればと思います!
では、さっそくJALフィロソフィを順番に説明していきます!
目次
第1部 すばらしい人生を送るために
第1部は、一人の人間としてどのように生きればよいか、迷ったときにどんな基準で物事を判断すればよいか、ということが書かれています。
第1章 成功方程式(人生・仕事の方程式)
人生・仕事の結果は、考え方・熱意・能力の3要素の掛け算によって決まるということです。
まず、「能力」とは、知能や運動神経などの天から与えられたもののことです。
そして、「能力」に「熱意」という要素が掛かります。
「熱意」は、人生や仕事に対して燃えるような情熱を抱き、一生懸命努力を重ねる人ほど高い数値になります。
これらに「考え方」が掛かります。
「考え方」は、人として正しい考え方を持っているか、ということであり、唯一マイナスの値になり得ます。
人生・仕事の結果は3つの掛け算によって決まるので、少しでもマイナスの考え方を持っていれば、全体の結果はマイナスになってしまいます。
さらに、「能力」が高く「熱意」が強い人がマイナスの考え方を持っていると、非常に大きなマイナスになります。
成功方程式の3要素の中で一番重要な要素は「考え方」ではないかと思います。
第2章 正しい考え方をもつ
第1章の成功方程式で出てきた「考え方」について、具体的に述べられた章です。
成功方程式の答え(人生・仕事の結果)を最大にするための考え方ともいえるでしょう。
人間として何が正しいかで判断する
「人を騙さない」「困っている人を助ける」などの、人として当たり前のことを大事にして物事を判断しようということです。
自分の評価を上げるために、ついつい嘘をついてしまったり、
パソコン作業で忙しいために、電車で妊婦さんに席を譲らないなど、
当たり前のことが出来ていない人が多いのではないでしょうか。
美しい心をもつ
人は「善い心」と「悪い心」を持っています。
- 「善い心」とは、家族や友人・お客さまなどを思いやる心
- 「悪い心」とは、自分勝手な心
のことです。
自分本位にならずに、周りの人を思いやる心を常に持つことを意識しようということです。
常に謙虚に素直な心で
傲慢にならずに、他人の意見を素直に受け入れることで、より成長できるということです。
常に明るく前向きに
人生、善いことばかりが続くわけでありません。
嫌なことがあったときこそ、明るく前向きに生きようということです。
明るく前向きな人には、素敵な仲間も集ってきます。
小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり
- 小善とは、一見愛情深い(優しい)行為だが、結果として相手をダメにすること
- 大善とは、一見非情な行為だが、実は相手のタメになること
「可愛い子には旅をさせろ」ということわざが、まさにこれにあたります。
土俵の真ん中で相撲をとる
土俵の真ん中を土俵際だと思って、常に背水の陣で(全力で)物事に取り組むことが重要だということです。
ものごとをシンプルにとらえる
人は考えれば考えるほど、物事を複雑に捉えがちです。
考えても答えが出ず行き詰まったときは、一度ゼロベースでシンプルに考え直してみると、案外答えにたどり着けるということです。
対極をあわせもつ
合理性と人間性のような相反する性質をあわせ持つということです。
ちょうど真ん中でも、偏っていてもいけません。
「ときには合理的に、ときには人間らしく」といったように、対極の性質を使い分けることが重要です。
第3章 熱意をもって地味な努力を続ける
第1章の成功方程式で出てきた「熱意」について、具体的に述べられた章です。
真面目に一生懸命仕事に打ち込む
真面目に一生懸命仕事に取り組むことで、自身が成長できることに加えて、周囲からの信頼も得ることができます。
加えて、仕事に対する”感覚”が研ぎ澄まされていきます。
お客さまの一歩・二歩先をいくサービスを感覚的に実践できるCAなどが良い例です。
地味な努力を積み重ねる
地味な努力は泥臭く、その瞬間だけをみれば無意味に感じるかもしれません。
しかし、より大きな成功を収めるためには、地味な努力が必要不可欠です。
そして、地味な努力を積み重ねるための一番良い方法は、「取り組んでいることを好きになること」です。
有意注意で仕事にあたる
有意注意の対義語は「無意注意」です。
これは、「物音がしたから振り返った」というような、反射的な意識の使い方です。
一方で、有意注意は「物音がした→異常が発生している→すぐに〇〇を確認しないと!」というように、
どんな些細なことにも意識を集中させるということです。
自ら燃える
人は3つのタイプに別れます。
- 自分で火をつけて燃えることができる自然性の人
- 火を近づけてもらえると燃えることができる可燃性の人
- 火を近づけても燃えない不燃性の人
の3タイプです。
組織やチームが成功するためには、全員が自然性か可燃性の人でなければなりません。
不燃性の人がいると、全体として大きく燃えることが出来ないからです。
パーフェクトを目指す
人間はミスをする生き物なので、毎回がパーフェクトという人はいません。
しかし、パーフェクトな結果を残すことができるのは、パーフェクトを目指した人だけです。
特に航空業界においては、妥協することはお客さまの命の危機に繋がるため、常にパーフェクトを目指すことが求められます。
第4章 能力は必ず進歩する
第1章の成功方程式で出てきた「能力」について、具体的に述べられた章です。
能力は必ず進歩する
いま能力がないからといって、チャレンジを避ける人は多くいます。
しかし、このスタンスではいつまでたっても新しいことを成し遂げることができません。
人の能力は必ず進歩するので、それを信じて突き進むことが重要だということです。
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第2部 すばらしいJALとなるために
第1部は、人生や仕事において大切にすべき考え方が述べられていました。
これは少し抽象的な内容でもありました。一方で、第2部には、JAL社員として意識すべきこと・大切にすべき考え方が記されています。
第1章 一人ひとりがJAL
JAL社員一人ひとりが当事者意識を持つことで、JALブランドが形成されます。
自分で考え、行動するために必要な考え方が述べられた章になっています。
一人ひとりがJAL
一人の社員は、会社視点では数万人のうちの一人であっても、お客さまからすると「JALを代表する社員そのもの」なのです。
例えば、JAL社員100人中、99人が顧客のことを思って行動しても、最後の一人の対応が悪ければすべてが台無しになります。
社員一人ひとりが「自分がJALブランドを作っているんだ」という思いを持つことで、JALブランドが完成に繋がります。
本音でぶつかれ
JALをより良くしていくためには、違和感を感じたり、問題意識が芽生えたりしたときに、本音をぶつける必要があります。
そのためには、
部下は、相手が上司であっても遠慮せず本音でぶつかり、
上司は、部下が本音でぶつかりやすい環境をつくることが必要です。
重要なのは職位や経験ではなく、「JALをより良くしたい」という思いです。
率先垂範する
※率先垂範:そっせんすいはん
「行動で示す・背中で示す」という言葉があるように、
人が嫌がるようなことにも率先して取り組むことで、周りの信頼を得られるということです。
これは若手だけに限った話ではありません。
経験豊富な社員ほど、口だけが達者で自分は行動しないということがよくあります。
自ら進んで仕事に取り組み続けることで、社員一人ひとりが働きやすい会社の形成にも繋がります。
渦の中心になれ
通称「ウズチュー」です。
仕事で成果を出すためには、自ら周りの人達を巻き込む必要があります。
年齢・職位・部署などは関係ありません。
会社のあちこちで渦ができあがっている状態が理想といえます。
尊い命をお預かりする仕事
JALといえば最高品質のサービスをイメージする人が多いですが、
JAL社員として「お客さまの命を預かっている仕事だ」という意識が全ての根底になくてはなりません。
JAL・JAL社員の責任は、「お客さまの命をお預かりし、安全に目的地まで送り届けること」なのです。
感謝の気持ちをもつ
倒産してもなお、今日に至るまでJALが飛行機を飛ばすことができているのは、
お客さまや関係者の方々の理解・協力があってこそです。
また、JAL社員が仕事に取り組めているのは、家族や仲間のサポートがあってこそです。
関わるすべての方々に感謝をし、全力で仕事に望むことがJAL社員には求められます。
お客さま視点を貫く
お客さまに心の底から喜んでもらえるサービスは、マニュアルからは生まれません。
また、自分が良かれと思ったサービスが、お客さま視点では満足できないということもあります。
「お客さまの立場ならどう感じるだろうか・何が欲しいだろうか」ということを常に考え、
お客さまと蜜にコミュニケーションを取り続けることが重要です。
第2章 採算意識を高める
倒産したJALだからこそ、社員一人ひとりが採算意識を持つことを徹底すべきです。
第2章では、採算意識を高めるために重要な考え方が述べられています。
売上を最大に、経費を最小に
企業経営の基本となる考え方です。
「売上を最大にし経費を最小にすることで、最大の利益を得ることができる」ということを、
社員一人ひとりが意識しながら、日々の努力を積み重ねる必要があります。
しかし、数字だけを重視すると、お客さまが離れていきます。
利益を最大にしつつも、お客さまに喜んでもらえるサービスを提供することが、JAL社員の使命なのです。
採算意識を高める
「今飛んでいる飛行機の売上はいくらで、費用はいくらかかっているのか」
「一人の社員を雇うためにいくらのコストがかかるのか」
などといった採算意識を、社員一人ひとりが持つ必要があります。
そのためには、社員一人ひとりが経営に参画しているという意識をもって日々の業務に取り組む必要があります。
公明正大に利益を追求する
利益が大切だからといって、粉飾決算などの不正をすることはもってのほかです。
日本を代表する企業だからこそ、良心に恥じることなく利益を追求する必要があります。
正しい数字をもとに経営を行う
正しい数字を管理するためには、以下2つの原則が重要です。
- 一対一対応の原則
→ お金やモノの動きと、伝票の処理を一対一で即座に対応させること - ダブルチェックの原則
→ お金を扱うときは、複数の部門や人が関わって処理すること
手間こそかかりますが、ミスを防ぐための効果的な原則です。
第3章 心をひとつにする
JAL社員全員が一致団結することで、会社としても個人としても幸せになります。
第3章では、社員が心を一つにする際に重要となる考え方が述べられています。
最高のバトンタッチ
一機の飛行機を飛ばすために、様々な会社・部門の社員が連携してバトンを繋ぐように仕事が引き継がれていきます。
ここで重要なのは、次にバトンを受け取る仲間のことを思って、目の前の仕事にあたるということです。
最高のバトンタッチを繰り返すことで、最高のフライトをお客さまに提供することができます。
ベクトルを合わせる
最高のバトンタッチでも述べたように、JALでは様々な社員が連携して一機の飛行機を飛ばすことができます。
社員のベクトル(価値観や目標)がバラバラだと、会社としての目標を達成することができません。
1+1を3にも4にもするように、社員同士で思いを共有しながらベクトル(方向性)を合わせることが必要です。
現場主義に徹する
「現場は宝の山」です。
現場には問題を解くための鍵となる生の情報が隠されており、これは本社に座って考えるだけでは絶対に発見することが出来ません。
JALでは、間接部門に採用された社員であっても現場を経験する期間が設けられ、
現場の問題点を風化させることなく上に届ける仕組みがあります。
実力主義に徹する
会社を存続させるためには、本当に力を持った人がリーダーの座に就く必要があります。
第4章 燃える集団になる
絶対に目標を達成するという強い意志を持った社員の集団こそ理想の組織です。
第4章では、燃える集団になるために重要となる考え方が述べられています。
強い持続した願望をもつ
高い目標を達成するためには、「こうありたい」という強い願望を持ち続けることが必要です。
強い願望を持ち続けることで、自らの潜在意識にまで働きかけ、その願望を実現する方向へと自然に向かうことができます。
成功するまであきらめない
何度失敗しても、「絶対に成功させてやる!」という強い意思を持ち続けることで、必ずや成功への道筋は見えてきます。
成功するまで挑戦させてくれる風土がJALにはあります。
有言実行でことにあたる
自分の頭の中で考えているだけでは、目標は達成できません。
言葉にすることで責任感が生まれ、また、周囲の協力を得ることもできるため、目標達成の確率が格段に上がります。
真の勇気をもつ
闇雲に挑戦することは「真の勇気をもつこと」ではありません。
冷静に現状を把握し、リスクも考慮したうえで行動することをいいます。
「周囲から嫌われるのでは?」という思いを捨てることも必要です。
第5章 常に創造する
常に新しいことに挑戦することでJALは成長し続けます。
第5章では、常に創造するにあたっての重要な考え方が述べられています。
昨日よりは今日、今日よりは明日
一社員として毎日成長し続けることが、JALとしての成長に繋がります。
たとえ同じ業務の繰り返しであっても、工夫次第では毎日成長し続けることが出来ます。
楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
新しいことに挑戦する時は、
事前に不安なことをあれこれ考えすぎず(楽観的に構想し)、
綿密に計画を立て(悲観的に構想し)、
成功を信じて突き進む(楽観的に実行する)ことが重要です。
見えてくるまで考え抜く
困難な目標であっても、様々な視点から深く考えることで、成功に至るまでの筋道が見えくるということです。
スピード感をもって決断し行動する
現代の時代の変化は激しく、お客さまのニーズもどんどん変化しているため、のんびり決断していてはJALファンが減っていきます。
厳しい競争下で勝ち続けるためには、スピード感が大切といえます。
果敢に挑戦する
JALは、日本初の国際線運航をはじめ、様々なことに挑戦してきました。
リーディングカンパニーとして、日本・世界のJALとして、果敢に挑戦し続けることは義務ともいえます。
高い目標をもつ
高い目標を設定する人は大きな成果を成し遂げ、低い目標しか持たない人はそれなりの結果しか得られません。
自ら大きな目標を設定することで、そこに向かってエネルギーを集中させることができ、それが成功の鍵となるのです。
「世界一のエアラインになる」というJALの目標も非情に高いですね。